空き家となった実家 売るべきか?貸すべきか?〜「負動産」にしないためのポイント〜
親の施設入所や相続を機に、実家が空き家になるケースが急増しています。全国の住宅の「7戸に1戸が空き家」となっており、2033年には「3戸に1戸が空き家」になる可能性があるとも言われています。
実は、空き家が発生する原因の過半数(約52%)は「相続」によるものです。実家を相続して「売るべきか、貸すべきか」と悩む方は多いですが、親世代にとっては「価値ある資産」でも、子世代にとっては管理や維持費がかかる「負担(負動産)」になりがちです。
今回は、空き家を次世代の負担にしないためのポイントを解説します。
1. 放置は絶対NG!空き家を維持するリスク(負動産リスク)
「思い入れがあるから」と空き家を放置し続けると、固定資産税や火災保険料、維持管理費などで年間数十万円のコストがかかり続けます。さらに、法改正により放置のリスクは年々高まっています。
- 固定資産税が最大6倍に跳ね上がるリスク
適切な管理が行われず、倒壊の危険等がある「特定空家等」に指定されて自治体から勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例から除外され、土地の固定資産税が最大で約4〜6倍に跳ね上がります。さらに令和5年の法改正により、特定空家に至らなくても、放置すれば特定空家になるおそれがある「管理不全空家等」として勧告を受けた場合も、同様に特例から除外されることになりました。 - 行政代執行や過料のリスク
再三の命令に従わないと、50万円以下の過料が科されるほか、行政が強制的に建物を解体(行政代執行)し、その費用が所有者に請求されることになります。
2. 「売る・貸す」の前に!クリアすべき法的な問題
空き家を活用・処分するための大前提は、「権利関係」を整理することです。ここを放置すると、売ることも貸すこともできない「問題空家」となってしまいます。
- 相続登記はお済みですか?(令和6年4月から義務化)
実家の名義変更(相続登記)をせずに放置していると、いざ売却しようとしてもすぐには手続きができません。さらに、令和6年4月1日から相続登記の申請が義務化されました。不動産の取得を知った日から3年以内に申請しないと、正当な理由がない場合10万円以下の過料が科される可能性があります。 - 「とりあえず共有名義」はトラブルの元
遺産分割の話し合いが面倒だからと、実家を兄弟で「とりあえず共有」にするのは非常に危険です。共有名義の不動産を売却したり、建物を解体したりするには共有者全員の同意が必要になります。将来、共有者の1人が認知症になったり、亡くなってさらに相続人が増えたりすると、完全に身動きが取れなくなってしまいます。速やかに遺産分割協議を行い、単独所有にすることが鉄則です。
3. 実家を「貸す」場合のポイントと注意点
実家を貸し出せば家賃収入が得られますが、将来を見据えた契約と対策が必要です。
- 「定期借家契約」の活用
将来、親が家に戻る可能性や、数年後に売却する可能性がある場合は、期間を定めて貸し出す「定期借家契約」を結ぶのがおすすめです。一般的な普通賃貸借契約だと、貸主側からの解約や更新拒絶が難しく、立ち退き時に高額な立退料を求められるリスクがあり、実家の売却の阻害要因になりかねません。 - 多様な活用方法(民泊、トランクルームなど)
住宅として貸すだけでなく、外国人観光客などをターゲットにした「民泊」や、部屋ごと・1畳単位で荷物置きとして貸し出す「トランクルーム」など、立地に応じた多様な活用方法も検討の余地があります。
4. 実家を「売る」場合のポイントと税制特例
売却を決断する場合、手残りの金額を大きく左右するのが税金の特例です。
- 「空き家の3,000万円特別控除」は要件に注意!
相続した空き家を売却した際、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。しかし、適用には以下のような非常に厳しい要件があるため注意が必要です。- 昭和56年5月31日以前に建築された戸建てであること(マンション等は不可)。
- 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること。
- 相続の時から譲渡の時まで、一度も「事業の用、貸付けの用、居住の用」に供されていないこと(一度でも貸してしまうと使えません)。
- 譲渡時に現行の耐震基準を満たしているか、または更地にして売却すること。
- 譲渡価額が1億円以下であること。
- どうしても売れない・貸せない場合は「相続土地国庫帰属制度」も
市場価値がなく、どうしても買い手や借り手が見つからない場合、令和5年4月に創設された「相続土地国庫帰属制度」を利用し、一定の負担金を支払って国に土地を引き取ってもらうという選択肢も生まれました(※建物を解体して更地にするなどの厳しい要件があります)。
5. 認知症による「資産凍結」を防ぐ!「家族信託(実家信託)」のすすめ
親が元気で「今はまだ売らない・貸さない」という場合でも、最も避けたいのは、将来親が認知症になって判断能力を失い、実家が「凍結」されてしまうことです。
「いざとなれば成年後見制度を使えばいい」と思うかもしれませんが、成年後見人が選任されても、居住用不動産(実家)を売却するには家庭裁判所の許可が必要です。生活費や介護費用の捻出といった明確な必要性がない限り、売却の許可が下りないケースも少なくありません。
そこで弊事務所がおすすめしているのが、「家族信託(実家信託)」です。
親に判断能力があるうちに、実家の名義と管理・処分権限を子どもなどの信頼できる家族(受託者)に託す契約を結んでおきます。これにより、万が一親が認知症になった後でも、子どもの権限でスムーズに実家を売却したり、賃貸に出したりすることが可能になり、資産の凍結を未然に防ぐことができます。
6. まとめ:空き家問題は「予防」と「親が元気なうちの話し合い」が鍵!
空き家を「負動産」にしないためには、親が元気なうちに親子で話し合い、対策を講じておくことが何よりも重要です。
- 家族信託の検討:親の認知症による資産凍結を防ぐ。
- 私物の整理・処分:親が元気なうちに、残すものと処分してよいものを仕分ける。
- 不動産調査と権利関係の整理:境界の確認や、相続登記・共有名義の解消など、いざという時に売りづらさ・貸しづらさの原因になる問題を事前に解消しておく。
司法書士は、相続登記の義務化対応、遺産分割協議による権利関係の整理、そして親が元気なうちの認知症対策(家族信託)など、空き家問題を法的な側面から解決する専門家です。
「実家をどうするか迷っている」「名義が先代のままになっている」「親の認知症が心配」という方は、問題が深刻化して身動きが取れなくなる前に、ぜひ弊事務所へお気軽にご相談ください。



