「とりあえず共有」は絶対NG!遺産分割の先送りが招くトラブルと複雑な解消手続き
親の遺産を相続する際、誰がどの財産をもらうかの話し合いがまとまらなかったり、平等に分けたいという思いから、不動産を「とりあえず全員の共有にしよう」としてしまうケースがよく見られます。
特に、相続登記が義務化された昨今、「とりあえず法定相続分で共有登記を入れておこう」と考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、これは根本的な問題解決を先送りしただけの状態に過ぎず、司法書士の立場からは決しておすすめできません。
後々になって深刻なトラブルに発展し、その解消のために多大な時間と費用がかかる複雑な法律手続きが必要になってしまうからです。
今回は、「とりあえず共有」に潜むリスクと、それを解消するための手続きについて解説します。
1.「とりあえず共有」が引き起こす3つの大きな問題
① 不動産の売却や活用が自由にできなくなる
共有不動産については、民法で厳格なルールが定められています。
日常的な修繕などの「保存行為」は各共有者が単独で行えますが、賃貸に出すなどの「管理行為」は持分価格の過半数の同意が必要です。
さらに、不動産を売却したり建て替えたりする「重大な変更・処分行為」には、共有者全員の同意が必要になります。
一見平等に見える共有ですが、もし一人でも売却に反対する人がいれば、不動産全体を売ることはできません。
結果として、活用も処分もできない状態に陥るリスクがあります。
② 固定資産税や維持管理費を巡るトラブル
不動産を所有していると、固定資産税や都市計画税、維持管理費などのコストが継続的に発生します。
これらの税金は、各共有者の持分に関係なく、共有者全員が連帯して全額を納付する義務(連帯納付義務)を負います。
実務上、役所からの固定資産税の納付書は代表者1名にのみ送付されます。そのため、代表して全額を立て替えて支払ったとしても、納付書が届かない他の共有者は支払いの意識が薄れがちになり、「自分たちの負担分を支払ってくれない」とトラブルに発展するケースが後を絶ちません。
③ 相続が重なり、見知らぬ人や行方不明者が共有者になる
「とりあえず共有」にしたまま時間が経過し、共有者の一人が亡くなると、その共有持分はさらにその配偶者や子どもたちへと相続されます。
これを「数次相続」と呼びますが、世代が変わるごとに共有者がネズミ算式に増えていきます。長年放置された結果、数十人もの共有者が存在し、中には面識のない親戚や、行方不明者、海外居住者などが含まれる状態になることも珍しくありません。
このような状態になると、いざ売却しようとしても全員と連絡を取り、同意を取り付けることは極めて困難になります。
2.共有状態を解消するための複雑な法律上の手続き
上記のような問題を解消するためには、共有状態を解消して「単独所有」にする、あるいは「売却して現金化する」必要があります。
しかし、一度共有にしてしまった不動産の共有関係を解消するためには、非常に重い時間的・経済的・精神的コストがかかる法律上の手続きを経なければなりません。
① 共有物分割協議と共有物分割請求訴訟
共有関係を解消するための話し合いを「共有物分割協議」と呼びます。これには共有者全員の合意が必要です。
話し合いがまとまらない場合は、地方裁判所に「共有物分割請求訴訟」を提起することになります。
裁判では、不動産を物理的に分ける「現物分割」、誰か一人が不動産を取得して他の人に代償金を支払う「賠償分割(全面的価格賠償)」、不動産を競売にかけて売却代金を分ける「競売分割(換価分割)」のいずれかの方法がとられます。
とくに競売分割になった場合、市場価格の3割減といった低い価格で手放さざるを得なくなる傾向があります。また、裁判には弁護士費用や鑑定費用など多額の費用と長い時間がかかります。
② 行方不明者や認知症の方がいる場合の手続き
共有者の中に認知症などで判断能力を欠く方がいる場合は、そのままでは協議ができないため、家庭裁判所で「成年後見人」等を選任してもらう手続きが必要です。
また、行方不明者がいる場合は、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てるか、失踪宣告の手続きを行う必要がありました。
近年、所有者不明土地問題に対応するため、令和3年の民法・不動産登記法改正により、新たに「所在等不明共有者の持分取得・譲渡」に関する制度が創設されました。この制度を利用することで、所在不明な共有者の持分を買い取ったり、第三者に一緒に売却したりしやすくなりましたが、これを利用する場合でも、裁判所への申し立てや公告、供託金の納付など、厳格な法的手続きが求められます。
いずれにせよ、専門家のサポートなしに進めることは極めて困難です。
3.まとめ:将来のトラブル(争族)を防ぐために
以上のように、「とりあえず共有」で結論を先送りしてしまうと、後になって共有状態を解消するために、訴訟や裁判所への申し立てといった複雑で負担の重い手続きが必要になってしまいます。
これを防ぐための最善の策は、そもそも「とりあえず共有」にしないことです。
将来のトラブルを防ぐためには、親が元気なうちに遺言書を作成し、「誰に・どの財産を相続させるか」を明確に指定しておくことが非常に有効です。
また、遺言書がなく遺産分割協議を行う際にも、安易に共有とせず、代償分割(不動産をもらう人が他の人に現金を払って清算する方法)などを活用して、可能な限り「単独所有」を目指すべきです。
相続手続きや遺言書の作成、すでにトラブルの火種となっている共有不動産の問題については、傷口が広がる前に、ぜひ当事務所へご相談ください。専門家の視点から、最適な解決策をご提案いたします。
法的トラブルに発展している場合でも、提携する弁護士等の専門家と連携し、最適な解決策をご提案いたします。



