「認知症による家賃滞納・退去不能」の悪夢が終わる!令和8年4月3日閣議決定の民法改正案がもたらす賃貸経営の救世主

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1. オーナー様を悩ませる「身寄りのない高齢入居者」の塩漬けリスク

単身の高齢入居者が認知症になり、家賃が滞納されてしまう。連帯保証人とも連絡がつかず、途方に暮れる……。高齢化が進む現在、こうしたトラブルに頭を抱える賃貸オーナー様が急増しています。

このケースで最も恐ろしいのは、「契約の解除すらできず、部屋が完全に塩漬けになる」という点です。
法律上、賃貸借契約を解除するには「契約解除の通知」を入居者に到達させる必要があります。しかし、入居者が重度の認知症で意思能力を失っている場合、法的な書類を受け取って理解する能力(受領能力)がないとみなされ、いくら内容証明を送っても契約解除の効力が発生しないのです。


2. なぜ今まで解決できなかったのか?(これまでの限界)

本来であれば、入居者に「成年後見人」をつけてもらい、後見人宛てに解除通知を送るのが筋です。しかし、オーナー様(大家さん)には入居者の成年後見を家庭裁判所に申し立てる権限がありません。

親族がいれば頼めますが、身寄りがない場合、最終手段として広島市などの自治体に「首長申立て(市長による申立て)」をお願いするしかありませんでした。しかし、行政の調査や手続きには膨大な時間と労力がかかり、その間も家賃滞納は雪だるま式に増え続けるという、大家さんにとってはまさに「出口のないトンネル」でした。


3. 令和8年(2026年)4月提出の民法改正案がもたらす「切り札」

こうした理不尽な状況を打破するため、今年4月3日に閣議決定された民法改正要綱案に、画期的な新制度が盛り込まれました。
それが「意思表示の受領の特別代理人」という制度です。

新制度がスタートすると、大家さんは次のように動くことができるようになります。

  • 大家さん自ら裁判所にアクションを起こせる
    大家さん(表意者)の請求により、家庭裁判所に「入居者に代わって契約解除の通知を受け取るための『特別代理人』」を選任してもらうことができます。
  • 適法に契約を解除できる
    選任された特別代理人に解除通知を送ることで、法的に有効に賃貸借契約を終了させることができます。これにより、明渡しに向けた法的根拠をしっかり確保できるようになります。

4. 退去後の「行き先」もスムーズに!広島の施設探しと首長申立て問題の解決

さて、契約が解除できたとしても、「身寄りのない認知症の高齢者をそのまま路上に追い出すわけにはいかない」という人道的な問題が残ります。退去後の行き先(老人ホームなどの施設)を確保しなければ、本当の解決にはなりません。


広島エリアでは、例えばヤクルト山陽さんが展開する「紹介のとなり」のような老人ホーム紹介サービスがあり、施設探しのプロが最適な行き先を見つけてくれます。
しかし、ここでも「施設との入所契約を結ぶための成年後見人がいない」という壁にぶつかり、結局は時間のかかる「広島市長による首長申立て」を待つしかない……というのがこれまでの実態でした。


ここでも新制度が大きな効果を発揮します。
実は、先ほど大家さんの請求で選任された「特別代理人」には、自ら家庭裁判所に「補助人(新しい成年後見制度の支援者)」をつけてもらうよう申し立てる権限が与えられているのです。


つまり、以下のようなスムーズな解決ルートが開通します。

  1. 大家さんが「特別代理人」を選任してもらい、契約を解除する。
  2. 特別代理人が、そのまま「補助人」の選任を裁判所に申し立てる(行政の首長申立てを待たずに手続きが進む!)。
  3. 選任された補助人が、「紹介のとなり」等で見つけた施設と入所契約を結ぶ。
  4. 入居者は安全に施設へ移り、大家さんの物件は無事に明け渡される。

5. 賃貸経営の「もしも」に備え、今から専門家と連携を

これまで、大家さんが泣き寝入りするしかなかった「身寄りなし・認知症・家賃滞納」の三重苦。令和8年提出の民法改正案は、この理不尽な膠着状態を、外側から合法的にこじ開ける強力なツールとなります。

制度が施行されれば、私たち司法書士のような専門家が「特別代理人」の候補者として間に入り、大家さんの権利を守りつつ、入居者のスムーズな施設移行(福祉への橋渡し)をサポートすることが可能になります。

「高齢入居者の受け入れはリスクが高い」と敬遠されがちですが、新しい法律の知識と専門家のサポートがあれば、恐れることはありません。
現在、同様のトラブルでお悩みのオーナー様や、今後の賃貸経営に不安を感じている管理会社様は、法改正を見据えた対策について、ぜひ当事務所へご相談ください。