古い建物の登記簿に知らない名前が?表題部所有者の「氏名誤記」を解決して相続登記をする方法

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相続登記の義務化がスタートし、ご実家や空き家の登記簿(登記事項証明書)をご自身で確認される方が増えています。
そんな中、当事務所にも以下のようなご相談が多く寄せられます。


「土地は亡くなった祖父の名義なのですが、上に建っている未登記建物の『表題部所有者』の名前が、祖父の名前と一文字違っています(例:『正一』なのに『正二』になっている)。このままでは建物の相続登記ができないと言われました。どうすればいいですか?」


実はこれ、昭和初期の古い家屋台帳や、紙の登記簿からコンピュータシステムへデータ移行(移記)する際に発生した「法務局(役所)側の入力ミス・転記ミス」である可能性が非常に高い事案です。


今回は、このような「実在しない架空の名前」が登記されてしまっている場合の解決方法と、相続登記を完了させるための実務テクニックを分かりやすく解説します。


原則:名前を直すには「本人の実印」が必要?

不動産登記法では、登記されている名前を間違えていた場合、それを正しい名前に直す登記(更正登記)をする必要があります。

しかし、表題部所有者の更正登記をする場合、原則として「誤って登記されている人の承諾書(実印押印+印鑑証明書)」が必要になります。
もし、登記されている名前が単なる誤記(架空の人物)であった場合、実在しない人物の印鑑証明書など取得できるはずがありません。ここで一般的な手続きが行き詰まり、いわゆる「困難登記」となってしまいます。


解決策:証拠を集めて「登記官の職権更正」を促す

本人の承諾書が取れない以上、解決策は一つしかありません。
それは、「さまざまな公的資料をかき集め、これが単なる誤記であることを客観的に証明し、法務局(登記官)の権限(職権)で正しい名前に直してもらう」という方法です。

登記官を納得させるためには、「消極的証明(その人はいない)」と「積極的証明(本当の持ち主はこの人だ)」の2つのアプローチで外堀を埋めていく必要があります。


1. 過去の履歴をたどる(コンピュータ化閉鎖謄本)

まず、「いつ、どこで名前が間違えられたのか」を特定します。
現在の登記簿の1つ前の状態である「コンピュータ化による閉鎖登記簿(紙の登記簿のコピー)」を取得します。この時点で正しい名前が載っていれば、平成のデータ移行時の単なる入力ミスと証明できます。
(※さらに古い「旧家屋台帳」も調査対象ですが、保存期間経過により法務局で「廃棄済み」となっているケースも少なくありません。その場合は無理に追わず、別の証拠を探します)


2. 「その人は実在しない」ことの証明(不在籍・不在住証明)

間違って登記されている架空の人物が、その不動産の住所地等に「本籍も住民票も存在しない」ことを証明するため、市区町村役場で「不在籍証明書・不在住証明書」を取得します。


3. 固定資産税の課税明細(名寄帳)

法務局の登記簿が間違っていても、市役所の税務課は「本当の持ち主」を正確に把握して、長年固定資産税を請求しているケースが多々あります。

市役所で「固定資産税の課税台帳(名寄帳)」や毎年の「課税明細書」を確認し、そこに「真の所有者の名前」「登記簿と完全に一致する家屋番号・面積」が記載されていれば、これが「真の所有者を立証する最強の証拠(キラーカード)」となります。
この証拠が強力であれば、前述の「不在籍・不在住証明」すら提出を省略して手続きを進められることもあります。


4. 相続人全員による上申書

最後に、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を揃えた上で、相続人全員で「登記簿上の名前は間違いであり、真の所有者は被相続人であることに相違ない。後日一切の紛争は生じさせない」旨を記した「上申書」を作成し、全員の実印を押印(印鑑証明書付)します。


法務局への「事前照会(登記相談)」が鍵

これらの強力な証拠(パズルのピース)が揃ったら、いきなり申請書を出すのではなく、管轄の法務局へ「事前照会(登記相談)」を行います。


「古い台帳等の一次資料は廃棄されていますが、固定資産税の課税実態や相続関係から見て、現在の登記名義は明らかな誤記です。職権で更正した上で、相続人からの所有権保存登記を受理していただけませんか?」と、証拠の束を提示して論理的に法務局と交渉します。
証拠が十分と認められれば、法務局は職権更正に応じてくれ、無事に相続人名義への登記が完了します。


まとめ:古い建物の名義問題は専門家へご相談を

「名前が一文字違うだけ」であっても、公的な記録を修正して相続登記を通すためには、高度な法的知識と、証拠をパズルのように組み立てて法務局を説得する実務上のノウハウ(交渉力)が求められます。


ご実家や空き家の登記簿を見て「知らない名前が載っている」「名前の漢字が違う」とお悩みの方は、決して諦めず、まずは当事務所のような不動産登記の専門家である司法書士にご相談ください。
残されたわずかな手掛かりから真実を立証し、大切な財産を次の世代へ引き継ぐサポートをさせていただきます。