連絡の取れない区分所有者への対応策「所有者不明専有部分管理制度」の活用と専門家による支援

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 マンションにおける長年の空き家や、所有者と連絡が取れないお部屋の存在は、適切な維持管理や将来の建替えを検討する上での大きな障壁となります。「管理費が滞納されているが、誰に請求すればよいかわからない」「修繕工事のために立ち入りたいが許可が取れない」といったお悩みを持つ管理組合の方も多いのではないでしょうか。

 こうした課題を解決するため、2026年(令和8年)4月1日より改正区分所有法が施行され、「所有者不明専有部分管理命令」という制度がすでに運用されています。

本記事では、この制度で選任される「管理人」にどのような権限があるのか、そして当事務所がどのように管理組合の皆様をサポートできるのかを解説します。

1.「所有者不明専有部分管理制度」とは?

 これまで、行方不明の所有者の部屋をどうにかしようとした場合、「不在者財産管理制度」などを利用する必要がありました。しかし、これは対象者の”全財産”を管理する大掛かりな制度であり、手続きが非常に複雑で、数百万円の予納金(コスト)がかかることも珍しくありませんでした。

今回新設された制度は、対象を「マンションの一室(専有部分)」のみに絞り込んだ、マンションに特化した使い勝手の良い制度です。

必要な調査を尽くしても所有者やその所在が分からない場合、管理組合の理事長などの利害関係人が裁判所に申し立てることで、裁判所が「所有者不明専有部分管理人」を選任します。

2.所有者不明専有部分管理人は何ができるのか

 選任された管理人は、行方不明の所有者に代わってその部屋を管理します。
 管理人の権限は、単なる見守りにとどまらず、管理の実務や法的処分にまで及びます。
 具体的には以下のようなことが可能になります。

① 専有部分の管理・処分の専属的権限

 対象となる専有部分(お部屋)や、その中にある動産、さらには敷地利用権などの管理・処分をする権利は、管理人に専属します。

② 日常的な管理行為(保存・利用・改良)

 漏水調査や配管の補修といった「保存行為」、および物件の性質を変えない範囲での「利用・改良行為」を管理人の判断で行うことができます。

③ 管理組合総会での議決権行使

 この制度の大きな特徴は、管理人が総会の招集通知を受け取り、所有者に代わって議決権を行使できる点にあります 。これにより、所在不明者の存在で停滞していた重要事項の決議が進めやすくなります。

④ 裁判所の許可による物件の売却

 裁判所の許可を得ることで、所有者の同意がなくてもその部屋を売却(処分)し、売却代金を所有者のために供託(国に預けること)して清算することが可能です。これにより、滞納管理費の回収や、新たな所有者への引き継ぎが可能になります。

3.専門家による「ワンストップ・サポート」の強み

この制度を有効に活用するには、マンション管理の知識、徹底した所在調査、そして法的手続きのすべてを連携させる必要があります。当事務所は、司法書士、行政書士、マンション管理士の資格を活かし、一連の工程をトータルに支援します。

① マンション管理士として:制度活用の道筋を作り、規約を整備する

 マンション管理士は、管理組合の最も身近なアドバイザーです。
 この制度を利用するためには、まず管理組合としての合意形成が必要です。マンション管理士は、滞納状況や部屋の状況を分析し、この新制度を利用すべきかどうかの「道筋」を立てます。
 また、国が定めた最新の「マンション標準管理規約(第67条の4など)」では、「理事長が理事会の決議を経て、裁判所にこの命令を申し立てることができる」というルールが新設されました。お住まいのマンションの管理規約が最新の法律に対応しているかをチェックし、規約改正案の作成や総会での合意形成をサポートします。

② 司法書士・行政書士として:客観的な「所有者不明」の立証

 裁判所に「所有者不明」と認めてもらうためには、「住民票など通常アクセスし得る公簿上の住所等を調査しても所在が明らかでない」「死亡しているが相続人が不明である」といった客観的な証拠(必要な調査を尽くしたこと)が必要です。
 司法書士・行政書士は、戸籍謄本や住民票、戸籍の附票などを収集・調査し、相続人の有無や所在を徹底的に追跡します。
 また、理事会の議事録作成や、所有者に対する内容証明郵便の作成などの作成を迅速かつ正確に行います。

③ 司法書士の視点:裁判所への申し立て手続きと「管理人」への就任

 調査が完了し、理事会で決議された後は、いよいよ裁判所への法的手続きです。
 司法書士は、裁判所に提出する「所有者不明専有部分管理命令の申立書」を作成し、複雑な法的手続きを管理組合に代わってサポートします。

 さらに重要なのは、司法書士自身が裁判所から「所有者不明専有部分管理人」に選任されるケースが多く想定されている点です。財産管理の専門家である司法書士が管理人に就任することで、滞納管理費の支払い手続き(供託金などからの配当)や、場合によっては裁判所の許可を得た上での「部屋の売却手続き(所有権移転登記を含む)」まで、法的に安全かつ確実な解決を実現します。

 また、認定司法書士として、調査過程で所在が判明した相手(元本140万円以下)に対する滞納管理費請求訴訟の代理や、預金・給与の差し押さえといった強制執行まで、窓口一つで対応いたします 。

4.まとめ:放置された空き家問題は「解決できる」時代へ

 長年、管理組合を悩ませてきた「行方不明者の部屋」ですが、2026年4月に施行されたこの新制度により、ついに法的なメスを入れることができるようになりました。

 しかし、裁判所を通じた手続きである以上、事前調査から申し立て、そして売却等の清算に至るまでは専門的なハードルがいくつも存在します。

 所有者不明の問題は、放置するほど解決が困難になります。
 お住まいのマンションで「連絡が取れない空き家」や「回収不能な滞納管理費」でお悩みの場合や、制度の詳細・具体的な進め方について詳しくお知りになりたい場合は、お気軽に当事務所までご相談ください。
 皆様の大切なマンションの資産価値と快適な住環境を守るお手伝いをいたします!