子どもが住まない「実家」の終活。空き家放置の恐るべきリスクと今すぐやるべき4つの対策

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 最近の相続相談で非常に増えているのが、「子どもたちはすでにマイホームを持っており、親が亡くなった後に実家に住む予定がない」というケースです。

 総務省の調査などによると、全国の住宅の「7戸に1戸が空き家」となっており、2033年には「3戸に1戸」あるいは「4戸に1戸」が空き家になる可能性があるとも予測されています。そして、空き家を取得する経緯の過半数(約54.6%)が「相続」によるものだというデータもあります。

「実家をどうするかは、親が亡くなってから考えればいい」と思っていませんか?
実は、その先送りが後々ご家族に大きな精神的・経済的負担を強いる「負動産」へと変わる原因になってしまうのです。

 今回は、子どもが住まない実家に関するリスクと、親が元気なうちにやっておくべき対策について、より詳しく解説します。

実家を「空き家」として放置する恐るべきリスクとコスト

 親の死後、誰も住まない実家をそのまま放置していると、次のような大きなリスクやコストが生じます。

1. 固定資産税が最大6倍に跳ね上がる

 2015年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」により、倒壊の危険などがある「特定空き家」に指定され自治体から勧告を受けると、土地の固定資産税の軽減措置が解除され、税金が最大6倍に跳ね上がります。
 さらに2023年の法改正では、放置すれば特定空き家になる恐れがある「管理不全空き家」という区分が新設され、これに指定され勧告を受けた場合も同様に固定資産税の軽減措置が外れることになり、放置に対するペナルティが厳格化されました。

2. 年間数十万円の維持管理コストと労力

 誰も住んでいなくても、固定資産税、火災保険料(空き家は保険料が高額になる傾向があります)、水道光熱費の基本料金、庭の草刈りや樹木の剪定費用、定期的に通うための交通費など、維持するだけで年間数十万円のコストがかかり続けます。
 タレントの松本明子さんは、実家を25年間空き家のまま維持した結果、トータルで1800万円もの維持費がかかったと著書『実家じまい終わらせました!――大赤字を出した私が専門家とたどり着いた家とお墓のしまい方』(祥伝社)の中で語っています。

3. 損害賠償のトラブル

 老朽化した空き家を放置した結果、台風などで屋根や外壁が飛散したり、庭の大きな樹木が倒れて隣家の塀や車を壊したりして被害を与えた場合、所有者として損害賠償責任を問われる可能性があります。
 実際に、台風で庭の木が倒れて隣家を壊し、500万円の修理代を請求されたケースもあります。

4. 相続登記の義務化による罰則

 2024年4月1日から「相続登記の申請義務化」がスタートしました。不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記を行わないと、10万円以下の過料が科される可能性があります。空き家だからといって名義変更を先送りすることは許されなくなりました。

「とりあえず兄弟で共有名義」は絶対にNG!

 実家を相続する際、兄弟間で平等にするため、あるいは話し合いを先送りするために「とりあえず共有名義にしておこう」と考える方がいらっしゃいますが、これは不動産相続における最大のタブーの一つです。

 不動産を売却したり、取り壊したり、賃貸に出したりするには、共有者「全員」の同意が必要になります。将来、兄弟の一人が認知症になったり、亡くなってその子ども(甥や姪)に相続権が移ったりして権利関係が複雑化すると、売却の意見をまとめるのが極めて困難になり、実家が手出しできない塩漬け状態になってしまいます。実家は極力「単独名義」で相続することがトラブル回避の鉄則です。

親が元気なうちにできる「実家の終活」4つの対策

実家問題のトラブルを防ぐためには、親に十分な判断能力があるうちに対策を打つことが重要です。

① 遺言書の作成と「付言事項」の活用

 実家を誰に相続させるのか、親の意思を明確にした遺言書を作成しておきましょう。特定の相続人が実家を単独で引き継ぐ代わりに、他の兄弟には現金を渡す(代償分割)など、生前に方針を決めておくことが大切です。
 また、遺言書には「付言事項」として、なぜそのような分け方にしたのか、家族への感謝や想いを書き添えることをお勧めします。不平等な遺産分割であっても、親の想いが伝わることで納得感と公平感が生まれ、「争族」を防ぐ大きな効果があります。

② 空き家売却の特例を見据えた準備

 親の死後に実家を売却する場合、「空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例」を利用できれば、税負担を大幅に減らすことができます。
 ただし、この特例を利用するには「昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること」「相続開始直前に親が一人暮らしをしていたこと」「相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること」など、厳格な要件が定められています。いざという時に特例が使えるか、事前に税理士などの専門家に確認しておくことをお勧めします。

③ 「家族信託(実家信託)」の活用

 親が認知症になり判断能力を失うと、不動産は「凍結」され、家族であっても実家の売却や修繕の契約ができなくなります。
 成年後見制度を利用したとしても、居住用不動産(実家)の売却には家庭裁判所の許可が必要となり、生活費の捻出目的などでないと許可が下りにくいのが実情です。

 そこでおすすめなのが「家族信託」です。親が元気なうちに、信頼できる子を「受託者」として実家の管理・処分権を託す契約を結んでおけば、万が一親が認知症になった後でも、子が自分の権限でスムーズに実家を売却し、その資金を親の施設入居費用などに充てることが可能になります。

④ 実家の「片付け」を少しずつ始める

 実家を売却・解体するにあたって、大きな壁となるのが「家財道具の片付け」です。
 親が亡くなった後、実家に溢れる大量のモノを子ども世代が片付けるには、膨大な時間と労力がかかります。業者に依頼した場合、家の広さやモノの量によっては100万円以上、時には500万円もの費用がかかってしまうケースもあります。
 親が元気なうちから、「使っていないモノを仕分ける」「生前整理をする」など、一緒に片付けを始めておくことが、将来の負担を劇的に減らすコツです。

おわりに

 実家の終活において最も避けなければならないのは、「話し合いの先送り」です。実家をどうするのか、お正月やお盆などご家族が集まるタイミングで、親が元気なうちにぜひ一度「家族会議」を開いてみてください。
 ご家族の状況によって、最適な解決策は異なります。
 手遅れになる前に、司法書士・行政書士津田リーガルオフィスまでお気軽にご相談ください。