おひとりさまの老後と死後を支える「高齢者等終身サポート事業」〜安心できる事業者選びのポイント〜
日々の業務の中で、「身寄りがなく、病院への入院や介護施設の入居時に身元保証人がいなくて困っている」「自分の死後の葬儀や遺品整理、家の片付けを誰に頼めばいいか不安だ」といった切実なご相談をいただくことが急増しています。
現在、日本は超高齢化社会を迎えており、2020年時点での65歳以上の高齢化率は28.8%に達しています。さらに、核家族化や未婚率・離婚率の上昇により、65歳以上の単身世帯(おひとりさま)は増加の一途をたどっており、将来的には65歳以上の男性の5人に1人、女性の4人に1人が一人暮らしになると予測されています。
このような背景から、家族に代わって高齢者の生活から死後までを支援する「高齢者等終身サポート事業」が近年急速に拡大し、大きな注目を集めています。今回は、この事業の具体的なサービス内容と、トラブルを防いで信頼できる事業者を選ぶためのポイントを詳しく解説します。
1.「高齢者等終身サポート事業」とは?
「高齢者等終身サポート事業」とは、身寄りのない高齢者や、家族が遠方にいて頼ることが難しい方に対して、生きている間の生活支援から死後の手続きまでを包括的にサポートする民間のサービスです。
主なサービスは、以下の3つの柱で構成されています。
1. 身元保証等サービス
医療機関への入院や、介護施設などへ入所する際に求められる「連帯保証人」や「身元引受人」の役割を事業者が担います。実際の現場では、9割以上の病院や福祉施設が身元保証人を求めており、用意できないと入院や入所を断られるケースも少なくありません。このサービスを利用することで、緊急時の駆けつけや、退院・退所時の身柄の引取りなどがスムーズに行われます。
2. 死後事務サービス
ご本人が亡くなった後のさまざまな事務手続きを、生前の委任契約に基づき代行します。死亡届の提出、葬儀・火葬・納骨の手配はもちろんのこと、未払いの医療費や施設費用の精算、行政手続き、ライフライン(電気・ガス等)の解約、家財道具や遺品の整理などを担います。
最近では、パソコンやスマートフォンの解約といった「デジタル遺品」の処理も重要なサポート内容となっています。
最近では、パソコンやスマートフォンの解約といった「デジタル遺品」の処理も重要なサポート内容となっています。
3. 日常生活支援サービス
高齢者が自立した生活を送れるよう、通院の付き添いや買い物への同行といった生活支援のほか、公共料金の支払いや預貯金の管理といった財産管理のサポートを行います。
2.なぜ事業者選びが重要なのか?〜トラブルの背景とガイドライン〜
この事業は、高齢者の安心を支える上で非常に重要な役割を担っていますが、一方で消費者トラブルも発生しています。
過去には、公益財団法人の看板を掲げていた大手の身元保証事業者が、利用者から預かった「預託金(死後の葬儀や遺品整理のための前払金)」を自社の運営資金に不正流用し、数億円もの資金が不足したまま経営破綻するという痛ましい事件も起きました。これにより、多くのおひとりさま高齢者が、支払ったお金を返してもらえないままサポートを失うという事態に陥りました。
この事業は「契約期間が長期間にわたること」「サービス提供に先行して高額な費用が前払いされること」「本人の判断能力の低下後や死後に実行されるため、契約がきちんと守られているかのチェックが働きにくいこと」といった構造的なリスクを抱えています。
こうした状況を重く見た政府は、2024年6月に「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」を公表し、利用者を保護し事業を健全に発展させるためのルールを示しました。
3.事業者を選ぶ際の5つの重要チェックポイント
事業者選びで絶対に確認すべき5つのポイントをご紹介します。
1. サービス内容と費用の明確さ
「契約時に一括で支払う費用」と「サービス利用の都度支払う費用」が明確に区分されているかを確認してください。基本料金の中に何が含まれており、病院への付き添いや駆けつけの際にいくらの追加費用がかかるのか、見積もりを出してもらい詳細を確認することが重要です。
2. 預託金(前払金)の安全な管理体制
死後事務などのために事前にまとまったお金を預ける「預託金」の管理方法は最も重要です。
事業者の運営資金と明確に区分して管理されていることは大前提ですが、事業者が倒産した場合に備え、信託銀行などを利用した信託契約によって預託金が保全されている事業者を選ぶことを強くお勧めします。
事業者の運営資金と明確に区分して管理されていることは大前提ですが、事業者が倒産した場合に備え、信託銀行などを利用した信託契約によって預託金が保全されている事業者を選ぶことを強くお勧めします。
3. 寄付や遺贈が契約の条件にされていないか
「亡くなった後に残った財産を全額事業者に寄付する」といった死因贈与契約や遺贈を、サポート契約の条件(パッケージ化)にしているプランには要注意です。
資金難の方へのセーフティーネットとして機能している面もあるものの、以下の3つの大きな理由から避けるべきとされています。
資金難の方へのセーフティーネットとして機能している面もあるものの、以下の3つの大きな理由から避けるべきとされています。
・利用者の「真意」の証明が困難
支援を必要とする弱い立場にあるため、事業者から求められると言いなりになってしまったり、「寄付を約束した方が最期まで大事にしてくれるのではないか」という心理が働きやすく、本当に本人の自由な意思によるものか疑義が生じやすくなります。
支援を必要とする弱い立場にあるため、事業者から求められると言いなりになってしまったり、「寄付を約束した方が最期まで大事にしてくれるのではないか」という心理が働きやすく、本当に本人の自由な意思によるものか疑義が生じやすくなります。
・利益相反によるサービスの質低下のリスク
事業者からすると、生前のサポート費用を抑えるほど、死後に受け取れる財産の額が増大することになります。このような「利益相反」の状況下では、本来必要なサービスが提供されず、サービスの質が低下するリスクがあります。
事業者からすると、生前のサポート費用を抑えるほど、死後に受け取れる財産の額が増大することになります。このような「利益相反」の状況下では、本来必要なサービスが提供されず、サービスの質が低下するリスクがあります。
・親族とのトラブル
財産がすべて事業者に渡ることで、死後に相続人である親族との間で、遺言能力や契約の有効性をめぐって紛争が生じるリスクが高まります。
財産がすべて事業者に渡ることで、死後に相続人である親族との間で、遺言能力や契約の有効性をめぐって紛争が生じるリスクが高まります。
4. 解約のルールと相談体制
長期間の契約になるため、途中で施設の変更や状況の変化によって解約が必要になることもあります。
契約するサービスの解除方法や解約時の返金ルール(法外な解約料が設定されていないかなど)が書面で明示されているか確認しましょう。また、連絡先が明確な相談窓口がきちんと設置されているかも信頼性の証です。
契約するサービスの解除方法や解約時の返金ルール(法外な解約料が設定されていないかなど)が書面で明示されているか確認しましょう。また、連絡先が明確な相談窓口がきちんと設置されているかも信頼性の証です。
5. 判断能力が低下した場合の法的対応(任意後見との連携)
認知症などで将来判断能力が低下した場合に備え、「任意後見契約」への移行方針がきちんと説明されているか確認しましょう。
財産管理や介護サービスの手続きを代理で行うには法的な権限が必要となるため、任意後見制度を活用する体制が整っている事業者は安心です。
財産管理や介護サービスの手続きを代理で行うには法的な権限が必要となるため、任意後見制度を活用する体制が整っている事業者は安心です。
4.まとめ:法的な裏付けで安心を確実なものに
高齢者等終身サポート事業のサービスを安全かつ確実に利用するためには、法的な制度との組み合わせが欠かせません。
例えば、事業者に財産管理や死後事務を任せる場合、その契約は公証役場で「公正証書」として作成することが望ましいです。公証人が本人の意思能力を確認した上で作成されるため、後から契約の無効を主張されるリスクを大幅に減らすことができます。
また、死後事務委任契約はあくまで「事務手続き」を任せるものであり、残った財産を誰に引き継ぐかという「財産の処分」については効果を持ちません。そのため、死後事務委任契約とセットで「遺言書」を作成しておくことが、ご自身の希望を完璧に叶えるための鍵となります。
高齢期の大切な財産と将来を託す契約だからこそ、少しでも不安がある場合は、司法書士・行政書士 津田リーガルオフィスにご相談ください。
契約内容の第三者的なチェックから、任意後見契約、遺言書の作成、そして遺言執行者の引き受けまで、皆様が最期まで自分らしく、安心して過ごせるよう全力でサポートいたします。
契約内容の第三者的なチェックから、任意後見契約、遺言書の作成、そして遺言執行者の引き受けまで、皆様が最期まで自分らしく、安心して過ごせるよう全力でサポートいたします。



