相続放棄の手続きの流れ(ご自身で手続きされる方向け)

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1.相続放棄とは

 相続人となった場合、被相続人に属した権利義務の一切を承継します(民法第896条)。
つまり、プラスの財産としての遺産を承継するだけでなく、マイナスの財産である借金や保証人の地位なども承継することになります。

 相続人となることで借金を背負わされるなどの不利益を回避する方法として、「相続放棄」という制度が用意されています。

 この「相続放棄」を行うことで、法律上、最初から相続人ではなかったこととなり、被相続人に属していた権利・義務一切を引き継ぐことから免れることができます。


 相続放棄をしようとする方は、自己のために相続があったことを知ってから3か月以内にその旨を家庭裁判所に申述しなければなりません。
 つまり3か月という期限(”熟慮期間”といいます)が設けられており、この期間内に家庭裁判所への申述という手続きを行う必要があります(※)。

※ 相続放棄の期間制限に関する注意点
 相続放棄には「自分が相続人になったことを知ってから3か月以内」という期間の制限が設けられていますが、その期間経過後に債権者から請求書が届いた場合で、なおかつ、その相続に関しプラスの財産を一切受け取っていないケースなど、”3か月”の期間を経過していても相続放棄の申述が可能なケースがあります。
 あきらめずに司法書士などの専門家にご相談ください。


 逆にいえば、遺産分割協議のなかで、「相続放棄する」と宣言し、それを書面にしていても、それは相続人の間で「(プラスの)遺産を相続しない」という意味にとどまり、法的には「相続放棄」をしたことにはなりません。
 この場合、その人は法定相続分の割合に応じて借金を相続したことになるので、債権者が返済を求めてくれば、法定相続分の範囲内で返済しなければならなくなってしまいます。


 1989年時点で年間約4万件だった「相続放棄」の利用件数が、2022年には約26万件と約9倍に激増しています。

 上記のような「被相続人の借金を背負いたくない」ケースだけでなく、「地方の売れない”負動産”を引き継ぎたくない」という理由や、「親族間で少額な遺産をめぐって揉めたくない」など、様々な理由から「相続放棄」を選択されている方が増えているようです。


2.相続放棄の手続きの流れ

では、具体的な「相続放棄」の手続きについて見ていきましょう。
なお、以下のステップのうち「4.家庭裁判所に相続放棄の申述をする」までを”3か月”以内に行うことが必要です。


1.相続財産を調査する

 特にマイナスの財産(借金や借金の保証人になってないか?)、田舎に負動産はないか?を、被相続人の生前から本人にヒアリングしておくことが大事です。
 相続開始後であれば、信用情報機関への照会や契約書などで借金を調査、毎年4~5月に届く「固定資産税納税通知書」に添付されている「固定資産課税明細(※)」や保管されていた「権利証」で不動産を確認することになります。

※ あくまで固定資産税の課税のためのものなので、固定資産税が非課税の場合には課税明細への記載がない物件もあります。


 なお、財産調査に時間を要することが予想される場合には、家庭裁判所に「熟慮期間伸長の申立て」を行うことで、”3か月”の熟慮期間を延ばすことも可能です。

2.必要書類をそろえる

相続人の立場 必要書類
共通 1. 被相続人の住民票除票又は戸籍附票
2. 申述人(放棄する方)の戸籍謄本(被相続人死亡後に発行されたもの)
申述人が、被相続人の配偶者の場合 3. 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
申述人が、被相続人の子又はその代襲者(孫,ひ孫等)の場合【第1順位】 3. 被相続人の死亡の記載のある戸籍一式
4. 申述人が代襲相続人(孫,ひ孫等)の場合,被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍一式
申述人が、被相続人の父母・祖父母等(直系尊属)の場合【第2順位】 3. 被相続人の出生時から死亡時までの戸籍一式
4. 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までの戸籍一式
5. 被相続人の直系尊属に死亡している方(相続人より下の代の直系尊属に限る(例:相続人が祖母の場合,父母))がいる場合,その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

※ 先順位相続人等から提出済みのものは添付不要
申述人が、被相続人の兄弟姉妹及びその代襲者(おいめい)の場合【第3順位】 3. 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
4. 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までの戸籍一式
5. 被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
6. 申述人が代襲相続人(おい,めい)の場合,被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

※ 先順位相続人等から提出済みのものは添付不要

3.相続放棄申述書を作成する

「相続放棄申述書」の様式を裁判所のホームページからダウンロードし、記入します。

相続の放棄の申述書(成人)のダウンロードリンク(裁判所ウェブサイト)

4.家庭裁判所に相続放棄の申述をする

被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、「相続放棄申述書」などの必要書類等を提出します。提出方法には「郵送」と「窓口への直接持参」の2通りがあります。


【提出・持参する書類一覧】

  • 「3.相続放棄申述書を作成する」で作成した相続放棄申述書
  • 「2.必要書類をそろえる」で集めた必要書類
  • 申立て費用:収入印紙800円分
  • 連絡用の郵便切手(申立先の家庭裁判所にご確認ください)


【申述人本人が窓口へ持参する場合の注意点】

 郵送ではなく、本人が直接家庭裁判所の受付(家事受付窓口など)に出向いて手続きをする場合は、以下の点にご注意ください。

  • 受付時間: 各家庭裁判所のホームページ等で「平日の受付時間(※一般的に9:00〜17:00、お昼休憩時を除くなど)」をあらかじめご確認ください。
  • 追加の持ち物: 上記の提出書類一式に加え、念のため「申述人本人の身分証明書(運転免許証やマイナンバーカード等)」と、申述書に押印したものと「同じ印鑑(万が一の書き直しのための訂正印用)」を必ず持参してください。

※ 郵送・窓口どちらの場合も、この際、「相続放棄申述受理証明書交付申請」や返信用封筒を一緒に提出しておくことで、後日、証明書を郵送で受け取ることができます。

5.家庭裁判所から届く照会書に記入して返送する

 家庭裁判所から「相続放棄の申述に関する照会書」という書類が届くので、必要事項を記入の上、「相続放棄申述書」に押印した印鑑と同じ印鑑を押印して、同封の返信用封筒にて、家庭裁判所に返送します。

※ 「相続放棄申述書」に押印した印鑑を覚えていない場合は、可能性のある印鑑を全部押印します。


6.相続放棄申述受理通知書が自宅に届いて「相続放棄」が完了

 照会書を家庭裁判所に返送して問題がなければ、「相続放棄申述受理通知書」という書面がご自宅に届きます。
 必要に応じて、別途「相続放棄申述受理証明書交付申請」を行います。

3.相続放棄してももらえる財産

 「相続放棄」をすると、”法律上”相続人でなかったことになり、”被相続人の借金を返済しなくてもいい”などのメリットがある一方で、預貯金などのプラスの財産も相続できなくなってしまいます。
その部分がネックになって、「相続放棄」に踏み切れないという人もいると思います。


 しかし、”法律上”相続財産に該当しないために、「相続放棄」をした人であっても、受け取れるものが存在します。

「相続放棄」しても受け取れるもの

受け取れる財産 注意点など
① 死亡保険金 受取人の固有財産扱いとなるため、受け取ることはできるが、税法上は”みなし相続財産”として相続税の対象となる。
② 死亡退職金 会社の退職金規程に基づいて、受取人に指定されていれば、受け取ることができる。
③ 遺族年金・未支給年金 年金関係の受取人は、遺族の固有の権利とされており、受取人が相続放棄していても受け取ることができます。
年金事務所で請求しないと支給されないので注意が必要です。
④ 葬祭費・埋葬料 国民健康保険や社会保険の法律に基づいて支給されるため、相続財産に該当しません。
こちらも、役所または年金事務所での請求が必要です。
⑤ お墓・仏壇 位牌なども「祭祀財産」にあたるため、相続財産の対象から外されており、祭祀承継者が引き継ぐことになります。
⑥ 香典 喪主に対して贈られる見舞金や葬儀費用にあたるもので相続財産ではありません。

まとめ:ご自身での手続きが難しいと感じたら

 相続放棄は、法律上で「3か月」という厳格な期限が定められている非常にデリケートな手続きです。

 必要書類の収集や申述書の作成など、一見するとご自身でも進められそうに思えますが、以下のようなケースでは手続きが難航したり、最悪の場合は受理されなかったりするリスクがあります。

  • 平日に家庭裁判所の窓口へ行く時間が取れない、または郵送の手配が不安な方
  • 被相続人の出生から死亡までの複雑な戸籍集めに苦戦している方
  • 自分が本当に相続放棄をすべきか(借金の総額が不明など)迷っている方
  • すでに3か月の熟慮期間が過ぎてしまっている、あるいは過ぎそうな方


 確実かつスムーズに相続放棄を完了させ、これからの生活の安心を取り戻すためにも、少しでもハードルが高いと感じられたら、どうぞ無理をなさらず専門家へお任せください。

 司法書士・行政書士 津田リーガルオフィスでは、戸籍の収集から申述書の作成・提出代行、家庭裁判所から届く照会書への対応アドバイスまで、トータルでサポートいたします。まずはお気軽にご相談ください。