家族信託で「信託口口座」を作らないとどうなる?個人口座で管理するリスクとデメリット

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家族信託(民事信託)を始める際、重要な手続きの一つに「信託口口座(しんたくぐちこうざ)」の開設があります。

しかし、「信託口口座を開設できる銀行が近くにない」「手続きに手間がかかる」「信託口口座の開設費用がもったいない」といった理由から、受託者(財産を管理するお子様など)の個人口座や、肩書だけをつけた名義口座でそのまま信託資金を管理しようとされるケースが見受けられます。


結論から申し上げますと、信託口口座を作らず個人口座等で信託金を管理することは、法律上・実務上に非常に大きなリスクを抱えることになります。

今回は、なぜ信託口口座が必要なのか、そして個人口座で管理した場合に生じる5つの重大なデメリットとリスクについて、分かりやすく解説します。


◆そもそも「信託口口座」とは?

「信託口口座」とは、金融機関の内部システムにおいて、受託者個人の固有財産(プライベートなお金)と信託財産(親から託されたお金)を明確に区別(分別管理)して保管するために開設される特別な預金口座です。


通常の個人口座とは異なり、金融機関の顧客情報(CIFコード)自体が分離して管理されるため、法的に「倒産隔離機能(とうさんかくりきのう)」や「口座凍結防止機能」を備えているという特徴があります。


◆個人口座(または肩書付き口座)で管理する5つの重大リスク

信託口口座を開設せず、受託者個人の口座で信託資金を管理した場合、将来的に以下のようなトラブルが発生する危険性があります。


1.受託者が亡くなったときに「口座凍結」と「相続争い」が起きる

受託者(お子様など)が親より先に亡くなってしまった場合、金融機関は口座を「受託者個人の相続財産」とみなして口座を凍結してしまいます。

本来、信託されたお金は受託者個人の相続財産ではないため、次の受託者(予備的受託者など)へ引き継がれるべきものです。

しかし、個人口座の場合は金融機関側で判別できないため、口座凍結を解除するには亡くなった受託者の相続人全員による遺産分割協議や印鑑証明書の提出が必要となります。


その際、亡くなった受託者の相続人から「これは個人の遺産だ」と主張されて払い戻しを拒否されるなど、親族間での深刻な紛争(争族)に発展するリスクがあります。


2.受託者個人の借金や破産で「差押え」を受ける恐れがある

受託者自身が個人的な借金を抱えたり、事業に失敗して破産・税金滞納処分などを受けた場合、債権者や税務署からその個人口座が差し押さえられたり、破産財団に組み込まれてしまうリスクがあります。


信託法上、信託財産に対する強制執行は禁止されていますが(信託法23条1項)、金融機関や裁判所からは個人口座内の資金が信託金かどうか識別できません。


差押えを解除して資金を取り戻すためには、裁判所に「第三者異議の訴え」を提起し、さらに保証金を納めて執行停止の仮処分を申し立てるという、莫大な時間・費用・労力がかかる事態に陥ってしまいます。


3.見た目だけの「屋号口座」では守られない(金融機関の落とし穴)

受託者個人口座の口座名義に「委託者〇〇 受託者△△」といった肩書(屋号)を付した口座(いわゆる屋号口座・信託専用口座)を作成して管理するケースがあります。

しかし、こうした屋号口座は金融機関内部のシステム上は単なる「個人の預金口座」として扱われていることがほとんどです。


そのため、受託者の死亡時にはやはり口座が凍結され、債権者からの差押えも防げないため、実質的な法的保護を受けることはできません。


4.アパートの修繕ローンなど「信託内融資」が受けられない

信託財産である賃貸アパートの大規模修繕や建て替え、あるいはアパートローンの引き継ぎ(信託内債務引受)などで金融機関から融資を受ける際、金融機関は「信託口口座」の開設を必須条件とします。


個人口座での管理では倒産隔離や返済原資の保全が担保されないため、金融機関から融資を断られてしまい、将来の活用計画が頓挫してしまう原因となります。


5.自分の生活費と混ざり「使い込み」や帳簿作成の負担が増える

個人口座で信託金を管理していると、自分個人の生活費や事業資金と信託金との境界があいまいになりやすく、無意識のうちに「自分の財布」と混同して使い込んでしまう(私消・流用)心理的な誘惑やモラルハザードが生まれやすくなります。


また、受託者には毎年の信託帳簿の作成・保存義務(信託法37条)が課されていますが、個人口座ではプライベートな入出金と混ざってしまうため、帳簿作成の事務負担が極めて重くなってしまいます。


まとめ:家族の安心と財産を守るために「信託口口座」の開設を

「信託口口座の開設手続きが大変だから」と個人口座で妥協してしまうと、数年後・数十年後に受託者自身の死亡や万が一の事態が起きた際、せっかく親の安心のために作った家族信託が完全に機能不全に陥ってしまいます。


司法書士・行政書士 津田リーガルオフィスでは、家族信託の契約書作成や信託不動産の信託登記だけでなく、連携する金融機関への事前交渉や「信託口口座」の確実な開設手続きまでトータルでサポートしております。

ご家族の状況に合わせた安全な信託設計について、ぜひお気軽にご相談ください。